■リスクアセスメント
・第1種試験のみで出題される項目です。
・出題頻度 直近過去問10回中9回出題


以下の内容は、2024年4月1日法改正後の内容となっております

1.リスクアセスメントとは?

リスクアセスメント(危険性又は有害性等の調査)とは、労働者の就業に係る危険性又は有害性(ハザード)を特定し、それに対しリスク低減措置を検討する一連の流れをいう。

2.化学物質のリスクアセスメント

・一定の危険性・有害性が確認されている化学物質については、リスクアセスメントが事業者に義務付けられている。対象となる化学物質は、SDSの交付が義務付けられている物質(リスクアセスメント対象物)とされている。

・化学物質のリスクアセスメントの具体的な実施方法は、厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」に定められている。

3.化学物質のリスクアセスメントの実施時期

①リスクアセスメント対象物を原材料等として新規に採用し又は変更するとき
②リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う業務に係る作業の方法又は手順
を新規に採用し又は変更するとき
等に実施する。

4.化学物質のリスクアセスメントの手順

① リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性の特定
② 特定された危険性または有害性によるリスク(※)の見積り
③ リスクの見積りに基づくリスク低減措置の内容の検討
④ リスク低減措置の実施
⑤ リスクアセスメント結果の記録の作成・保存、労働者への周知


※リスクとは、労働災害発生の可能性と負傷又は疾病の重大性(重篤度)の組合わせであると定義される。

5.情報の入手

リスクアセスメントの実施に当たっては、リスクアセスメント対象物に係るSDS(安全データシート)、作業標準、作業手順書、作業環境測定等の資料を入手し、その情報を活用する。

6.危険性又は有害性の特定

リスクアセスメント対象物による危険性又は有害性の特定は、リスクアセスメント等の対象となる業務を洗い出した上で、原則として国連勧告の「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」などで示されている危険性又は有害性の分類等に即して行う。

7.リスクを見積もる方法

A.リスクアセスメント対象物が当該業務に従事する労働者に危険を及ぼし又はリスクアセスメント対象物により当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度(発生可能性)及び当該危険又は健康障害の程度(重篤度)を考慮する方法

ア.発生可能性及び重篤度を相対的に尺度化しそれらを縦軸と横軸としあらかじめ発生可能性及び重篤度に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法(マトリクス法)

イ.発生可能性及び重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを加算又は乗算等してリスクを見積もる方法(数値化法)

ウ.発生可能性及び重篤度を段階的に分岐していくことによりリスクを見積もる方法(枝分かれ図を用いた方法)

エ.ILO の化学物質リスク簡易評価法(コントロール・バンディング)等を用いてリスクを見積もる方法(コントロール・バンディング)

オ.化学プラント等の化学反応のプロセス等による災害のシナリオを仮定してその
事象の発生可能性と重篤度を考慮する方法(災害のシナリオから見積もる方法)

B.当該業務に従事する労働者がリスクアセスメント対象物にさらされる程度(ばく露の程度)及び当該リスクアセスメント対象物の有害性の程度を考慮する方法

ア.管理濃度が定められている物質については、作業環境測定により測定した当該
物質の第一評価値を当該物質の管理濃度と比較する方法(実測値による方法)

イ.濃度基準値が設定されている物質については、個人ばく露測定により測定した
当該物質の濃度を当該物質の濃度基準値と比較する方法(実測値による方法)

ウ.管理濃度又は濃度基準値が設定されていない物質については、対象の業務につ
いて作業環境測定等により測定した作業場所における当該物質の気中濃度等を当該物質のばく露限界と比較する方法(実測値による方法)

エ.数理モデルを用いて対象の業務に係る作業を行う労働者の周辺のリスクアセス
メント対象物の気中濃度を推定し、当該物質の濃度基準値又はばく露限界と比較する方法(使用量などから推定する方法)

オ.リスクアセスメント対象物への労働者のばく露の程度及び当該物質による有害性の程度を相対的に尺度化し、それらを縦軸と横軸とし、あらかじめばく露の程度及び有害性の程度に応じてリスクが割り付けられた表を使用してリスクを見積もる方法(あらかじめ尺度化した表を使用する方法)

8.リスク低減措置の優先順位

≪優先順位の高い順≫

危険性又は有害性のより低い物質への代替化学反応のプロセス等の運転条件の変更、リスクアセスメント対象物の形状の変更等又はこれらの併用によるリスクの低減

② 工学的対策(防爆構造化、安全装置の二重化)
衛生工学的対策(機械設備の密閉化、局所排気装置の設置等)

③ 管理的対策(作業手順の改善、立入禁止措置等)

④ リスクアセスメント対象物の有害性に応じた有効な保護具の選択及び使用


執筆者:合同会社ブルームリンクス 高山治樹(衛生管理者試験専門講師)

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